[せ-001]
精神科医
せいしんかい
 精神の病(やまい)を診察・治療する医師。心を扱う専門家であることから、しばしば他人の心を「見抜く」と思われたり、無意識レベルに潜む相手の本音を察知する能力があると思われたりする。心はあらゆる言動に反映されるものゆえ、社会現象や犯罪もまた精神科医によって読み解かれ得るはずといった誤解は、そのような事情に基づく。宮崎勤や酒鬼薔薇事件で多くの精神科医が得意気に動機や犯人像を「分析」してみせ、しかもどれも見当違いでしかなかったのは記憶に新しい。また社会評論の類でも、彼らは予想以上に月並みな意見しか述べられない。しかしマスコミはそんなことなど承知のうえで、「心の専門家でさえこの程度なのだから、報道内容が表面的であったり的を得ていなくとも当然」といった自己弁護と思考停止の道具に利用している。となれば「出たがり屋」の精神科医は、出番に当たっては香山リカのように芸名を用いることが賢明な策であるに違いない。
WEB 


[せ-002]
性転換
せいてんかん
 自分の生物学上の性に違和感を感じている人が、肉体を反対の性に改造する医療的手段。96年7月、埼玉医科大学の倫理委員会が、「性同一性障害」と認められた場合に限り、性転換手術を医療手段の一つとして認めると発表した。性同一性障害とは「ジェンダー・アイデンティティ・ディスオーダー」の訳で、その倫理委員会の答申中の定義によれば「生物学的には完全に正常であり、しかも自分の肉体がどちらの性に所属しているかをはっきりと認知していながら、その反面で、人格的には自分が所属していると確信し、日常生活においても、別の性の役割を果たそうとし、さらには変性願望や性転換願望を持ち、実際に実行しようとする人々」のこと。この答申を承けて翌年5月には、日本精神神経学会も条件つきで「正式な医療」と容認した。学会の指針ができたことで、申請があれば手術可能となった。
WEB 


[せ-003]
声優ブーム
せいゆうぶーむ
 現在の声優(主に若手女性声優)人気を指して使われる言葉。アニメ関連誌に限らず、一般誌でも“第3次声優ブーム”と呼ばれることが多いが、こうなると1次、2次のくくりが難しくなってくる。現在のブームは、アニメ作品に限らず、ゲームとラジオという新旧のメディアの相乗効果もあって底辺が広く、ブームというよりは人気が定着した感がある。考えてみると“アイドル声優”とは、声優グラビア誌の登場や、声優をメインとした企画もののアニメ・ゲームの乱立により、本来裏方である声優にパーソナルなスポットが当たることによって生まれた(というか、最初からスポットが当たることを狙った)、異質な存在である。その申し子と言えるのが、デビュー当時、異例の若さでビッグプロジェクトに抜擢された椎名へきる。アイドル声優全般にも言えることだが、とりわけ彼女などは、“アイドル”という言葉がアイドル以上に似合うキャラクターの持ち主なのではなかろうか。
 異業種からの参入組が、現在の声優人気の一翼を担っていることも忘れてはならない。元レモンエンジェルの桜井智、元セイントフォーの岩男潤子、元オーロラ5人娘の千葉千恵巳、元少女隊のTOMO(なぜかアイドルグループ出身者が多い)、少し上の世代でも日高のり子、佐久間レイ、戸田恵子など、アイドル歌手的なところを経て、声優になった者は少なくない。しかし、声優の短い歴史をひもとくこともなく、声優とは俳優の仕事の一つであるから、舞台や歌など、いわゆる表に出る仕事をこなすのは、ごく自然な流れと言えよう。かといって、声優のCDのCMがガンガン打たれるような現況には、違和感が否めない。野沢那智とかその辺をどう思っているのか、知りたいところではある。
WEB Seiyuu (voice actor) database
http://www.win.or.jp/~toshi/seiyuu/seiyuu.html
WEB Seiyuu Database WWW version
http://www.noppo.com/windom/T-mode/sdb/


[せ-004]
世界同時渋谷化現象
せかいどうじしぶやかげんしょう
 世界的に同時多発で広がるポップ・カルチャー・ネットワークのこと。エディターの川勝正幸が、95年にヴァネッサ・パラディのインタビュー中に、彼女の音楽の趣味(フリー・ソウルや60年代ロック)が渋谷の若者と似ていることから思いついた言葉で、以後90年代の都市生活者の気分を表すうえで重要なキーワードとなった。ここ数年のスウェディッシュ・ポップやグランド・ロイヤルやブルース・ リーやタランティーノの熱狂的な受け入れられ方に見られるように、“共通のセンスやライフスタイルを志向する人々が世界の各都市に散らばって住みネットワークを構築する”という夢のような状況は、閉鎖的だった80年代ニューウェーブ組にはなかなか理解しがたい一面もあるが、リイシューCDを新譜として楽しめる10代の少年少女にとっては、むしろ当り前のこととして受け入れられているようだ。 外資系巨大レコード店の進出やインターネットなど情報伝達のインフラが進んだことにより、今や我々は世界中のインディ・バンドのCDを簡単に入手したり、お気に入りのアーティストとEメールで交信することだって可能となった。ちなみに前述の川勝氏は「“世界同時渋谷化現象”とは言い換えれば“世界同時心斎橋化”であり、“世界同時ストックホルム化”であり、“世界同時レ・アール化”である」とも述べている。
WEB 


[せ-005]
セガ・バンダイ合併騒動
せが・ばんだいがっぺいそうどう
 わずか4カ月間で消えた和製ディズニー誕生の幻影。97年1月23日に始まる大手ゲームメーカー・セガエンタープライゼスと大手玩具メーカー・バンダイの合併発表から、解消に至るまでの約4カ月間を指す。家庭用ゲーム機市場では不振ながらもアーケードやテーマパークビジネスでは依然として開発力の高さを誇ってきたセガと、日本の人気アニメーションのキャラクター権の大半を保持するバンダイの合併は、発表当初、世界に通用するデジタルエンタテインメント企業の誕生か?と大騒動を巻き起こした。
 が、発表から約4カ月後の5月26日にバンダイが合併延期を発表。同日21時、セガがバンダイからの合併解消を受諾したと発表し、単なる業務提携という形に落ちついた。表向き、直接的な原因は「バンダイの部長クラスの反対」の声にあったとされているが、バンダイは「たまごっち」で成功を収めながらも「ピピン・アットマーク」の莫大な赤字を回収するには至っておらず、セガはセガで、アーケードで稼いだ売り上げをセガサターンが食いつぶしている状態だったため、様々な思惑が入り乱れていたことは確か。ただし、先鋭のデジタルテクノロジーを保有するセガと強力なキャラクター・マーチャンダイジング・ノウハウを保有するバンダイの合併という考え方自体は、和製ディズニー的デジタルエンタテインメント企業の誕生を予感させるものだっただけに、瓦解が惜しまれる事件だった。
WEB セガとバンダイ10月1日に合併することを発表、新社名は「セガバンダイ」
http://www.watch.impress.co.jp/PC/docs/article/970123/bandai.htm
WEB セガ・バンダイ合併解消、なお業務提携の道を探る
http://www.watch.impress.co.jp/pc/docs/article/970527/bandai.htm


[せ-006]
関根勤
せきね・つとむ
 タレント。格闘家(自称)。「ぎんざNOW!」の素人ものまね道場から芸能界入り。「カックラキン大放送」でのカマキリ男、「欽ちゃんのどこまでやるの!?」のクロコなどいくつかのターニングポイントを経て、現在の絶妙なポジションに腰を据える。自身が主宰する劇団・カンコンキンシアターや、盟友の小堺一機と長年続けている一連のラジオ番組「コサキン」では、理性を失ったかのごとく自分をさらけ出す関根だが、「笑っていいとも!」や「王様のブランチ」などで見られる完全に番組とシンクロした姿も、同じ関根勤なわけで、この辺が彼のただならぬ所以である。ただならぬと言えば、テリー・ジョーンズ監督作品『エリック・ザ・バイキング』で、なで肩を披露しながら、普段のくだらない御託を並べていたことも、ただならない経歴である。ルー大柴、キャイ〜ンなど、どうかと思う素材を見事メジャーへと送り出すプロデューサー的手腕を見せたり、知念里奈に「結婚したいタイプ」と言わしめるほど家庭を大事にするところから、芸能界での信望も厚い。そんなビューティフルなオヤジになりたいと思っている男性は、かなり多いはずである。
WEB 


[せ-007]
セレクトショップ
select shop
 名前の通り、オーナー、バイヤーがセレクトして買い付けた商品を売るショップ。主にインポートブランドを扱う店を指す。元祖セレクトショップのザ・ギンザ・ビームスをはじめ、アクアガール、ヴィア バス ストップ、ボールルーム、アドバンスト チキュー……、書き出せないほどの数である。オリジナルブランドに力を入れている店も一部あり。ショップによって取り扱いブランドは多少異なるものの、モードの一極集中現象により、コーディネートを工夫してみても結局似たようなものになってしまうきらいはある。97年夏もホールターネックにひざ丈スカート、青いペディキュアにサンダル、仕上げはブランドバッグというコギャル以上大人未満のセレクトショップ・ギャルが増殖した。一部の有能なバイヤーは今や有名人だが、大きな意味でスタイルスト業をこなしているわけだから当然か。これで本職の適当なスタイリストは楽になったろう。1、2軒の店に飛び込めば、それなりにお洒落で文句の出ないスタイリングができあがり。それは一般の客も同じ。悪意はないしたまに買い物もするが、セレクトショップの功罪は、日本から「極端にダサい人」というのを減らしたが、逆に迫力さえ感じる独創的でお洒落な人も減らしてしまった気がするところ。もちろんそれは「店がセレクトしてくれる」ことに甘えてしまっている受け手の罪でもあるのだが。
WEB BE@MS INDEX
http://www1.so-net.or.jp/BEAMS/


[せ-008]
先行オールナイト
せんこうおーるないと
 おもに洋画の超大作・話題作のロードショー公開時に用いられる興業形態で、封切り日の1週間前の土曜日の夜に行われる。時に2週前に行われる「先々行オールナイト」もある。
 おそらく82年12月11日の『ランボー』が、その第1号である。さすが東宝東和といえよう。その効果もあってか『ランボー』は口コミによるクリーンヒット作となった。ロッキー以降のスタローンが、アクション俳優としてドル箱になるのは『ランボー2』からである。
 翌年になると「先行オールナイト」は早くも定着し、シリーズものにおいて大いなる盛り上がりをみせた。6月25日は奇しくも『スター・ウォーズ ジェダイの復讐』と『007オクトパシー』がともに「先行」でぶつかりあった。とくに『ジェダイ』は、上映前にダースベイダーや、ストーム・トルーパーズが劇場内を練り歩き、興奮が頂点に達する頃、スクリーンのカーテンが中央から割れ、その瞬間の客全体のうなり声と拍手は「先行オールナイト史上もっともエキサイティングなもの」ではなかろうか。
 以降、「先行」は配給会社の「やる気」のバロメーターみたいなものになり、映画ファンの間で定着するが、中には記録的な空回りもあった。93年のフランシス・コッポラ作品『ドラキュラ』は、劇場に、外国人モデル数人が、ドラキュラと、淑女に扮するマジ・コスプレを配置、そして本編上映の前にコッポラからの「新宿プラザでごらんの皆さんこんばんは」で始まるメッセージフィルムの豪華おまけつきだったが、客の入りは4分の1ぐらい、という残念なものだった。
WEB 


[せ-009]
前世療法
ぜんせりょうほう
 転生輪廻の実在を前提に、過去生を探ることによって、現在の自分が苦しんでいる神経症や心身症を癒す療法。米国の精神科医ブライアン・L・ワイスが88年に著した『前世療法』が出典。彼は精神分析のために患者へ催眠術を施したところ、意識は幼少期へ遡行するどころか、生まれ変わる以前の過去生へと飛翔し、そこでトラウマが見出されたという。過去のトラウマが現在へ症状をもたらしていると考える点では、伝統的な精神分析と同じ発想であるが、何千年も前の過去生を云々されてはやはり眉に唾をつけたくなる。催眠術による「過去の想起」が常に真実であるという無邪気な確信と、トラウマと現在との関係をあたかも「ネクタイをするのが嫌いな人は過去生で絞首刑にされた」といった類の安易な因果関係で説明しようとしたところが問題。しかし、壮大な物語を患者に与えることによって癒しをもたらそうという手法は、広い意味での精神療法とはいえるだろう。
WEB 
http://club.infopepper.or.jp/~yyamazaki/previous_life..htm


[せ-010]
戦隊ヒーロー
せんたいひーろー
 75年放映開始の『秘密戦隊ゴレンジャー』から、現在放映中の『電磁戦隊メガレンジャー』まで、テレビ朝日系列にて脈々と続いている、東映が世界に誇る特撮ヒーローシリーズの俗称。オフィシャルには“超世紀全戦隊”と呼ぶのが正しいが、いまひとつ定着していないのが現状だ。シリーズを通し、オープニングからエンディングまで、バンダイとのタイアップ見え見えな要素がてんこ盛りだが、本物っぽいメカではなく、おもちゃっぽいメカをテレビで見せることにより、実際のおもちゃをリアルに感じさせるという、コロンブスの卵的な戦略には唸らされる。近年では千葉麗子、さとう珠緒の輩出などで、タレントの先物買い的な番組としても注目に値し、『カーレンジャー』出身の来栖あつこも、いつブレイクしてもおかしくない逸材。その点でいけば、現在の『メガレンジャー』では女性陣2名だけでなく、男性陣も若くてルックスのいい俳優を揃えており、彼らの今後の活躍が期待される。本物の役者が出演する後楽園ゆうえんちのショーには、そっち系のオタクだけでなく、「子供が好きでして……」と言い訳しながらも、本当は自分が死ぬほど見たい主婦の来場者も多い。
WEB 戦隊史講座
http://spock.vector.co.jp/authors/VA001051/Heisei/Deep/sentai0.htm
WEB 超世紀全戦隊プラス!
http://www.alles.or.jp/~hachibe/sentai.htm
WEB TOEI
http://www.toei.co.jp/


[せ-011]
洗脳
せんのう
 なんらかの信念を植えつけ、心を操る行為。中国で、脅迫や拷問などの手段を用いての「共産主義教育」をそう呼んだことから、用いられるようになった言葉。統一教会やオウム真理教事件をめぐる報道を通じて、すっかり日常語のごとくなってしまった。“洗う”と言いながら“染め”ているわけで、そんな意味と言葉とのずれを配慮してか、最近では、マインド・コントロールということが多くなった。洗脳を解くことを「逆洗脳」というが、これは「マインド・コントロールを解く」というより、ふさわしい面もあるかもしれない。オウム信者の思想を、市民社会の共同性に回収しようとすることもまたマインド・コントロールにすぎないという批判を通じて、社会の教育や制度、常識なども、すべてがマインド・コントロールだとする発想が広まり、いよいよ身近で日常的な感覚になった。それは一面では正しい認識でもあろうが、水で薄めた陰謀史観が蔓延しているような、分裂病的な世の中になることでもあった。
WEB マインドコントロール研究所(破壊的カルトのワナが狙っている!)
http://www2.n-seiryo.ac.jp/TEACHER/usui/mc/index.html
WEB ぼくたちの洗脳社会
http://www.netcity.or.jp/OTAKU/univ/toshokan/senno/


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