[ち-001]
知の技法
ちのぎほう
 東京大学教養学部の文科系1年生用の必修科目「基礎演習」のサブ・テキスト。学問の手順が「それぞれの時代に、一定程度、共有されている技術ないし作法」を伝えることを目的としたもの。94年に刊行され、なぜか一般社会でもベストセラーとなった。その後、『知の論理』『知のモラル』が出て、“知の3部作”となった。『知の技法』には、マドンナの写真集『SEX by MADONNA』を参照してのレトリック論があったり、いしいひさいちの4コマ漫画が翻訳論の参考として添えられていたりする。また『知の論理』では吉田戦車の『伝染るんです』を案内にしての精神分析学入門がある。マドンナ論は、大衆文化を政治学的に読み解く方法を説いたもの、他はわかりやすく親しみやすくするための配慮だろう。最近の東大では、おたく評論家・岡田斗司夫の講義が満員になるなど、文化系学生がやたらにサブカルチャー論を好むらしい。入学以前の教養がそれしかないのだから、学生が歓迎するのは当然だろう。岡田が例外なわけではなく、演習用のテキストまでも、こうしてメイン・カルチャーとしての境界線を引くことを拒むようになっているわけで、もはや教師の側にも境界の意識はないようだ。
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[ち-002]
千葉真一(1939年生)
ちば・しんいち
 “サニー・チバ”。現在彼が再び脚光を浴びている大きな理由が、クエンティン・タランティーノが熱狂的な千葉ファンだという事実からである。しかし、若者が千葉を受け入れるその下地を作ったのは、間違いなく関根勤といっていいだろう。彼がさんざんモノマネし倒した『直撃!地獄拳』での千葉の怪演ぶりを目当てに、千葉特集が組まれた劇場には、多くの観客がつめかけた。大山倍達をモデルにした『けんか空手・極真拳』での千葉の怪鳥音やアクションに爆笑する“不謹慎な”客席を、門下生あるいは大山ファンの観客が激怒するという一幕もあった。千葉に集まる内外の注目は、彼に新たな活躍の場を与えることを予想される。
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[ち-003]
中バコブーム
ちゅうばこぶーむ
 大会場を容易に満員にできるアーティストが、オールスタンディングで2000人前後の集客能力のライブ会場を好んで使用する傾向。新宿のリキッドルーム、渋谷のON AIR EAST、TBS横の赤坂BLITZ、東名阪のCLUB QUATTROといったところが中バコの代表的存在。また草分け的存在は神奈川県のCLUB CITTA' 川崎であろう。80年代後半のイカ天〜インディーズブームまでは、ライブハウスから武道館へのサクセスストーリーが日本のロックビジネスの王道だった。90年代に入り、エイベックス系やビーイング系の日本人アーティストを中心に、東京ドームでのビッグコンサートが日常的に行われるに至り、日本武道館や横浜アリーナを容易にソールドアウトできる他のアーティスト達が、それに反発してか、今やこぞってこうした中バコでの連続公演を選択する傾向が強くなった。高い金を払っているのに巨大スクリーンによるビデオコンサートのような気分に陥る大会場のコンサートよりは、ステージと客席の距離が近い中バコを、アーティスト側も観客側も求めるようになったのは自然の摂理だろう。日本のコンサートに欧米のようなダイビング(警備員の制止を振り切って観客やアーティストがステージから客席へ飛び込む)やモッシュ(周囲の客に辺り構わず身体をぶつけ合って踊り狂う原始人様式の鑑賞法)が見られるようになったのも中バコブームの産物だ。
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[ち-004]
超科学
ちょうかがく
 今日の科学を超える科学。未知のエネルギーを空間から取り出すフリー・エネルギー研究、地震予知、病気治療・予防法、超能力的な現象についての研究など、様々な分野に今日の科学が認めない理論や装置がある。多くが一人一党の個人科学だが、超心理学実験を行っているソニーのESPER研究所のように、企業で研究に取り組んでいるところもある。また、関英男の日本サイ科学会、猪股修二の意識工学会など、研究会を組織している人々もいる。超科学は、現代科学への批判からくる反近代主義的なイデオロギーをともなう場合が多く、その意味では一種の“精神世界運動”とも見なせる。とくに最近この世界で流行している波動の科学にはその傾向が強い。そのためしばしばオカルト科学と批判される。オカルティックなほうが魅かれる人が多く、商売にしやすいようだ。反近代主義者の経営コンサルタント船井幸雄の影響などもあって、企業人などにも広く、超科学の夢は広く浸透している。もっとも超科学の発想のほとんどは、従来の科学的認識の枠組の内部にしかなく、疑似科学とのそしりは免れ難い。
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[ち-005]
超合金
ちょうごうきん
 投資や利殖の対象としてももはや確実な、チビっ子からいい歳した大人まで魅了してやまないヘヴィでメタルな憎い奴。74年2月、ポピー(83年以降はバンダイ)より発売開始され、第1号アイテム「ダイカスト マジンガーZ」が、いきなり大ブレイク。シリーズ化するにあたり、マジンガーZが超合金Zなる物質で作られたという設定だったため、現実には亜鉛合金製にもかかわらずなぜか非科学的にも「超合金」と名付けられることとなる。その後も「勇者ライディーン」での完全変形、「超電磁ロボ コン・バトラーV」での完全合体実現により、高価なためもあってチビっ子の憧れナンバーワンの座に就く。
 ところが、マジンガーZの必殺技・ロケットパンチの機能をその後のアイテムにも付け続けたため、手をなくすチビっ子が続出。ゆえにヴィンテージ・トイ業界での、完全ミント状態での異常なまでの高騰ぶりへと至ったのだと思われる。そんな近年のオモチャ異常ブームの波に乗り、96年末には「超合金・両津勘吉」で復活。続いて97年末には原点回帰の意味も込め、リアルな造形で完全関節可動の「超合金魂・マジンガーZ」をリリースするという、相変わらず男心のツボを押さえまくった活動を続けている。ちなみに「超合金・一寸法師」などの生身の人間や、超合金ボールペン」など、謎のアイテムも多数あり。そしてシリーズ中の欠番は「トラック野郎」だったりもするらしい。
WEB BANDAI GALLERY
http://www.bandai.co.jp/bgr/grl/grlhome.htm


[ち-006]
長寿マンガ
ちょうじゅまんが
 目を疑うほどに長大なマンガも最近では珍しくない。古くは(80年代初頭)、巻数で言うなら、60巻を超えた長谷川町子『サザエさん』、矢口高雄『釣りキチ三平』が4コマ、ストーリーマンガの両巨頭だった。
 96年、さいとう・たかを『ゴルゴ13』(69年連載開始)、秋本治『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(連載開始の76年には美内すずえ『ガラスの仮面』、細川智栄子あんど芙〜みん『王家の紋章』も始まっている)が揃って100巻の大台を突破。現在、水島新司『あぶさん』、小池一夫・神江里見『弐十手物語』、魔夜峰央『パタリロ』、雁屋哲・花咲アキラ『美味しんぼ』など、60巻を超えてなお連載中の作品も多く、これら全てが千万部単位の売れ行きを示している。驚異的、の一言である。
 ただし、長編になるほど新しい巻の部数は漸減し、それだけの巻数を置ける棚を持つ書店も少ないため古い巻も手に入りづらくなる。講談社『週刊少年マガジン』の蛭田達也『コータローまかりとおる!』(82年連載開始)は、内容的に以前とあまり落差がないにも関わらず連載時に突然『コータローまかりとおる!柔道編』と改題、『柔道編』の単行本を第1巻として売り出した。旧版の単行本(60巻)は新たにスペシャル版として刊行し直している。出版社も作品の残すために懸命に知恵を絞っているのだ。
 「長寿マンガ」として、作家に続ける意志がありながら中断されたままとなっているタイプの作品もある。その代表に、石ノ森章太郎『サイボーグ009』(初連載は64年)がある。2000年に描き下ろし完結の予定だという。連載を終わらせてもらえなかったために、別の話として構想されていたものを組み込んでしまった荒木飛呂彦『JoJoの奇妙な冒険』(「週刊少年ジャンプ」、87年連載開始)の場合は、「延命マンガ」とでも呼ぶのがふさわしいだろう。
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