[ゆ-001]
柳美里(1968年生)
ゆう・みり
 小説家。97年の芥川賞受賞で一躍時代の顔となった感があるが、遍歴は長く複雑。高校中退後、東京キッドブラザースの女優を経て青春五月党を創立。複雑な家庭事情、幼少時の苛め、アイデンティティ・クライシス、数々の挫折、自殺未遂等々、心的外傷の集積のような青春時代を送る。ここに在日韓国人二世であること、女性であることを加えれば、ポリティカルには絶対的に正しい立場から物を書けることになる。もっとも柳の魅力はその正しさの背後にある彼女自身の弱さとのアンバランスにある。いずれにせよ、自分のことにせよ社会のことにせよ、直接的にものをいうことをいかに回避するかの技術を争ってきた文壇にあって、柳の存在は爆弾のような危険さと決定力を持つ。受賞作の『家族シネマ』では自身の家族を扱い、「家族」の虚構性を演劇と映画と小説の三つ又を掛けたかたちでまとめ、成功している。今後は、みずからに課し、引き受けることになったイメージをいかにして裏切っていけるかが課題となるだろう。
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