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平気でうそをつく人たち
へいきでうそをつくひとたち
 自己愛を満足させるために平然と他人を操作し利用しようとする、ある種の人格障害者たちの別称。97年にベストセラーを記録した精神科医M・スコット・ペックの書名に由来する。同書はあたかも虚言癖に関する実用書であるかのような宣伝をされていたが、内容はもっと根源的かつ繊細なものであった。精神医学的アプローチに倫理や善悪の要素を取り込むことは独善的となる危険を伴うが、なるほど日常において、漠然とした「おぞましさ」や警戒心を呼び覚ます人物と遭遇することがある。相手をモノとしか見なせず、真っ向から危害を加えることこそないものの、他人を支配したり操ることを心の糧としているような者がまぎれもなく存在する。そのような、微妙なニュアンスにおいて邪悪さを感じさせる人々を抽出し論じたことは、ひとつの功績であろう。本当は、精神科医ではなく文学者が行うべき仕事であったのかもしれないが。
WEB 


[へ-002]
ペッツ
pez
 72年、森永製菓がオーストリアから輸入販売して以来、現在でもいまだに人気を集めている清涼菓子。発売当初は100円であった。いろんなキャラクターの容器(ペッツ・ディスペンサー)は現在29種。コレクターも多く、プレミアムの付いたディスペンサーは高額で取り引きされている。発明したのはオーストリアのエドハース3世。27年のことであった。ぺッツ(PEZ)の名はドイツ語のペパーミント(PfeffMrminZ)に由来する。49年、あのディスペンサーがエドハース3世とシガレットライターの発明者であるMr. UXAによって製作され、53年、エドハース3世がウォルト・ディズニーと出会い、今日の子供向けディスペンサーが作られたという由緒ある経歴なのだ。72年に日本に登場して以来、フエ付きが出たり、ぬか漬け秘伝のもと「ぬかよろこび」を封入品にするなど様々な変遷を経て今日に至っている。おもちゃとお菓子の融合体として、ある種の普遍性を有した、今世紀を代表するアイテムの一つであろう。
WEB CUTEMANIA.COM
http://www.cutemania.com/


[へ-003]
ペット
pet
 愛玩用動物、あるいはコンパニオン・アニマル(伴侶動物)のこと。世界的にいって、都市化が進むと、人々は犬よりも猫を飼いはじめる傾向がある。これはペットと住宅事情が密接な関係にあるからで、最近、日本では都会の高層住宅でも飼うことができるハムスターやフェレットといった小動物、コバルトスズメといった鑑賞魚、ヘビ、トカゲといった爬虫類など従来では考えられないような生き物をペットとして飼うようになった。これらは観賞用という側面が強く、マンションのベランダを飾るガーデニング人気も追い風になっている。
 しかし、観賞用や愛玩用だけでなく、ペットは人々の心を癒すための動物としても注目されはじめた。アメリカでは自閉症の子供をイルカと遊ばせて治療するアニマル・アシステッド・セラピー(動物介在療法)が話題になったことがある。現在、この分野でもっとも活躍している動物は犬である。日本でも86年より、日本動物病院福祉協会がCAPP(コンパニオン・アニマル・パートナーシップ・プログラム)を開始し、養護施設や病院、老人ホームで主に“セラピー犬”を使った訪問活動を実施するようになった。小子化、高齢化、独身者の増加といった家族が減少していく社会要因が、ますますペットを擬人化し、“伴侶”とみなす傾向に拍車をかけている。ペット食品も人間同様に健康志向が強まり、犬猫用のミネラルウォーターやアロエ入りのペットフードや、交通事故に備えて犬猫用の血液型検査器も登場した。
WEB WELCOME TO KICAL
http://www.alpha-web.or.jp/kitasato/kical/index.html


[へ-004]
別役実(1937年生)
べつやく・みのる
 マスター・オブ・不条理演劇。97年は別役実の生誕60周年にあたり、別役作品の上演が目白押しである。しかし、なぜ今また別役かと言えば、トレンディドラマのような職場や家庭といった設定を排した非日常に放り出された人間たちが、どのように互いの関係を築いてゆくかを描いた別役作品が、職場や家庭ばかりに価値観を見いださなくなった我々にとってリアリティを持ちはじめたから……、とも説明できる。が、ぶっちゃけた話をすれば、吉田戦車やダウンタウンの現れる前から別役はそのテの世界を描いていたわけで、吉田やダウンタウンの出現を経てようやく別役を愉しむ下地ができたからともいえるのだ。宮沢章夫、KERA、平田オリザなど、若手作家がそれぞれに別役からの影響を素直に認め敬意を表してきたことも別役ルネッサンスに一役買っている。ともあれ還暦を迎えてなお、文学座、演劇集団円をはじめ多くの劇団に作品を提供し、ますます創作ペースが上がり、劇作百本突破という鶴屋南北以来の快挙を成し遂げた別役。驚異の存在である。
WEB 別役実誕生60年祭
http://www.st.rim.or.jp/〜anmitsu/jamci/betsuyaku/index.html


[へ-005]
ペプシマン
pepsiman
 96年3月より、日本市場の“帝国支配”からペプシ・ファンを救済するためにCMに登場したアメリカ生まれのニューヒーロー。生体組成は超合金流体金属の特殊生命体。同年、NASAで意思を持った宇宙金属を開発中、研究員が飲んでいたペプシコーラ缶のロゴと突然融合して誕生したとされている。『スター・ウォーズ』や『ターミネーター2』などを手掛けたI.L.MがこのCMを制作、特殊映像技術では最高峰といわれるだけあって、キャラクターのコンピュータ・グラフィックスが秀逸である。これまでたくさんのバージョンが放映されたが、この現代のハイテク・スーパーヒーロー、かっこよさが15秒しか続かない点で全て共通している。困った人がいればどこからともなく現れ、ペプシコーラを振る舞い去っていくのだが、最後は必ず失態を演じてオチとなる。“帝国支配”は永遠に続くという意味なのだろうか。比較広告でライバル社にずっと戦いを挑んできたペプシコーラだが、ペプシマンの滑稽な敗北ぶりに新たな戦略を読み取ることも可能だろう。
WEB WELCOME TO PEPSI COLA JAPAN
http://www.pepsi-j.com/
WEB MT/www.calley.co.jp
http://www.calley.co.jp/otk/MT/


[へ-006]
ヘロイン
heroin
 キング・オブ・ドラッグにして、ダウナー(抑制剤)の最高峰。ケシの未熟果(ケシ坊主)から採取される阿片の主成分であるモルヒネに、さらに無水酢酸を加えて半合成したもので、正式名称を塩酸ジアセチルモルヒネという。使用当初は猛烈な吐き気と痒みに襲われるが、数日でそうした不快感は治まり、“波ひとつない水面”に例えられる、極上の至福感を堪能することができる。しかしながら、排尿困難、便秘、食欲及び性欲の喪失ほか、人間としてのあらゆる活動欲求が断たれてしまうため、長期連用は自ずと死を招く。使用中止後の禁断症状も、まさに王者のレベルで、発熱、骨の痛みほか、アルコールの禁断症状をも上回る“自律神経の嵐”を味わうハメになる。阿片愛好家には、エドガー・アラン・ポー、ボードレール、ジャン・コクトー、オスカー・ワイルドなど、文学界の錚々たる面々が名を連ね、またヘロイン中毒者としては、故ウィリアム・バロウズに始まり、ニルヴァーナの故カート・コバーン、『スタンド・バイ・ミー』(86年)の故リヴァー・フェニックスがよく知られるところ。みんな死んでるな……。
 我が国では19世紀半ばの阿片戦争を教訓とし、世界に先駆け、早々と1870年には取締り法が制定された。現在でも我が国ではほとんど出回っておらず、ここ何年か末端価格は1グラム6〜7万円のまま高値維持。ヘロインと、アッパーのコカイン覚醒剤との同時摂取を、スノーボールと言い、これは死と隣り合わせの危険な行為である。映画『パルプ・フィクション』(94年)でユマ・サーマンがハマッていたのがコカインで、ジョン・トラボルタがやっていたのはヘロイン。劇中サーマンが失神してしまったのは、このスノーボールによる。トラボルタのネタ(ヘロイン)をコカインと間違えて大量に吸ってしまったのだ。
WEB 薬物紹介
http://www.pref.yamanashi.jp/police/seian/seian11.htm


[へ-007]
ベルギーワッフル
べるぎーわっふる
 田舎者が群がる円形のパンケーキ。86年に大阪でベルギー・ワッフルの店『マネケン』がオープンし話題なる。その後東京にも進出し、96年12月に新宿店、97年5月には渋谷店がオープンした。新宿店はオープン当初は空いていたが、テレビや口コミで広がりたちまちブームになった。現在では常時、長蛇の列ができ、少なくとも15分前後は待たないと購入できないほど。この人気は各所にも飛び火し、ベルギーワッフルをメニューに加える飲食店も増え、コンビニにも登場するようになった。
 ベルギーワッフルは濃厚なバター味に砂糖の焦げた匂いを放つ、薄い円形のパンケーキのようなもの。正直言って今まで食べたことのない感激をするような味ではない。話の種に一度試しに食ってみるかという類である。いわば10年位前に原宿で流行ったクレープ、またはローマのスペイン広場で日本人が食べようとするアイスクリームみたいなもので、所詮は田舎者人気の食べ物である。

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